最近、電車や街の中で、手のひらくらいの小さいゲーム機を、ペンのような細い棒で操作している人をよく見かけるようになりました。そのゲーム機の画面を熱心にみているのは子供だけではなく大人も多く、これまでのゲーム機とはようすが違うようです。
実はこれ、ゲームメーカーの任天堂から発売された「ニンテンドーDS」というゲーム機です。DSというのは “Double Screen” の略で、他の携帯用ゲーム機では1面しかなかったスクリーンが2面あります。この本体にカード式のソフトを入れると、ボタンだけでなく、「タッチペン」と呼ばれる細い棒で操作ができるようになります。
ニンテンドーDSは2004年発売当初から人気でしたが、2005年に「脳を鍛える大人のDSトレーニング」(通称「脳トレ」)というソフトが出てから、大ブームになりました。脳トレは、ゲーム形式で記憶力をためしたり、計算をしたりして、その結果から自分の「脳年齢」がわかるというもので、「脳トレ」や「脳年齢」ということばは流行語にもなりました。そして、ニンテンドーDSはどこの店に行っても、いつも売り切れという状態が長い間続きました。2007年7月には、ニンテンドーDSの日本国内のうに上げは1800万台を突破、現在では、毎月250万台生産していますが、それでも需要に間に合わない状態が続いています。
これまでも日本ではファミリーコンピュータ(ファミコン)、プレイステーション(PS)といった様々なゲーム機がヒットしましたが、利用者は、主に 10代、20代の若者でした。しかし、ニンテンドーDSは、男女をとわす、30代以上の大人にも人気です。
ニンテンドーDSが成功した利用は、主に2つあります。まず、操作が簡単なことです。これまでのゲームは、画面を見ながら複数のボタンをタイミングよく押すなど、複雑な操作しなければなりまぜんでしたが、ニンテンドーDSは、タッチペンで画面に触れるだけでいいので、ゲームが苦手な人でも簡単にできます。そして、もうひとつの理由は、ソフトが豊富なことです。ニンテンドーDSのソフトは、ゲームにとどまらず、たとえば、英語、漢字、地理、歴史など勉強ができる学習ソフトや、常識やマナー、料理のレシピ、顔のマッサージ、眼の体操といったゲームではないソフトも数多くあります。この2つの点から、これまでゲームは縁遠いと思われていた人々、得に女性や高齢者も、ニンテンドーDSに関心を持つようになり、爆発的なヒットにつながりました。
楽しみながら学習できる教育用のソフトを特に、「エデュケーション(教育)」と「エンターテインメント(娯楽)」を組み合わせて「エテュテインメント」と呼ぶことばがありますが、最近では、ニンテンドーDSのエテュテインメントのソフトを授業に使う学校も出てきました。例えば、ニンテンドーDSを使って、授業の最初に漢字の書き取りをする中学校や、英語の単語の聞き取りをする大学などが新聞でも取り上げられました。ニンテンドーDS用の学習ソフトを独自に開発しはじめた学校もあります。
以前から、楽しく学べる教材はいろいろありましたが、ニンテンドーDSが発売されたことによって、それがますます盛んになっているようです。その背景には、努力して学習することが苦手な子供が多くなったこと、テレビゲーム世代が親になって、ゲームに対する抵抗がなくなったことなどが考えられます。
このように、ニンテンドーDSの登場によって、ゲーム機に対する考え方は大きく変わりました。これまで「頭が悪くなるから、ゲームをしてはいけません」と子供に言っていた親や教師が、進んで子供にニンテンドーDSの学習ソフトをやらせたり、自分の脳を鍛えるために脳トレをするという光景も今ではずらしくありません。